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記事: W PIPING'S IN FRAME

W PIPING'S IN FRAME

W PIPING'S IN FRAME

ポケットについての取り止めの無いお話です。



一口にポケットと言っても作りは様々なので、今回は革ジャンに多く用いられる ”玉縁ポケット” の内のひとつで、私の大好物でもある ”両玉縁ZIP式” にピントを合わせてみます。

レザージャケットの専門メーカーカドヤ
ZIPPERを覆い隠しているパイピング状のパーツが ”玉” です。
額縁の中、両側に玉があるので ”両玉縁” と言います。

一枚革上にポケット口を作りたい時、包丁でスーッと切り込みを入れる事になりますが、そこに六手間加える事で両玉縁が作られます。
切り込んだだけでも立派に機能する所になぜこの様な造作をする必要があるのでしょうか。

元来この仕立ては、生地物の衣類に用いられていたディティールです。
ハサミで裁断した生地が、そのままでは解れて最終的に糸に戻ってしまう事は想像できます。
それでは上手くありませんから工夫する必要があり、玉縁が編み出された。
そして、その技術を身につけたテーラー達が後に革を扱う事になり、そのまま革の上に落とし込まれ、受け継がれ、受け継がれ、、、定着した。


そうなんです。 この仕立て、革の上では無用の長物と言えなくもありません。

実際、BLACK STARのPAD袋 HFG WAIST BAGの背面ポケット などには切り込みポケットが採用されています。

薄くフラットに仕上げられるこの仕様は、革の特性を逆手に取った合理的で無駄が無くスマートで控えめな、ある意味理想的構造。

さて、両玉縁の存在意義はどうしましょう。
額縁を作る事でZIP周辺に適度な厚みと高低差が生まれ、破損しやすい金属ZIPを保護する。切りっぱなしの革断面より丸みと弾力のある玉の方が触感が良いなど機能的利点も挙げられますが、同時に造形的魅力もそこに存在します。
革特有の凹凸が生み出す陰影、その奥に潜むギラつく金属のチラリズムその様は、空冷エンジンの冷却フィンさながら。

革ジャンの魅力とは? のひとつの答えが ”両玉縁ZIP式” に凝縮されている事に気付いた時以来、私の大好物になったのでした。








旧き良きテーラー達に乾杯しませんか?
【市島】